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観劇・旅行・日々のこと


by nao201009
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Without You ソウル公演

たったひとりのミュージカル。
Anthony Rapp(RENTのオリジナルMark)がその実体験をひとり何役もこなして演じるもの。
RENTの作者Jonathan Larsonのあまりにも突然の死、そして最愛のお母様の死。
それぞれのその当時の光景をリアルに語り、会話を再現し、歌を交えながら演じられる一人舞台。

特にJonathanについては当時の様子が時系列で詳細に演じられ、改めてその死の衝撃の大きさを痛感しました。

プレビュー公演の前日。ドレスリハーサルを無事成功させ、興奮が治まらないAnthonyはあらためてJonathanに、ともに仕事ができる喜びと感謝を伝えようするのだけど、当のJonathanは取材記者に囲まれて近づく事ができない。
あきらめて遠巻きに「I’ll see you tomorrow」と声をかけて現場を後にするAnthony。
そして翌朝。信じられない突然の悲報。
信じられない形で迎えてしまったプレビュー初日。あの有名なエピソードがAnthonyの言葉で語られる…

そして後半はお母様との温かいふれあいの数々。
癌に侵されたお母様を何度も何度も見舞うAnthony。
徐々に弱っていくお母様。どうしたって避ける事のできない永遠の別れ。
それでも仕事のためにNYに戻らなければいけない。
別れを切り出す時のやるせない表情が今でも焼き付いています。

大切な人の「あまりにも突然の死」と「覚悟しなければならない死」
辛い…どちらも究極に辛い。

もちろんAnthonyはプロフェッショナルに徹しているので感傷的な様子などは少しも見せないけれども、この作品を演じる事はその悲しみをえぐるような痛みに耐える事なのではないかな。

今思い返しても、実際はAnthonyの一人芝居を通してしか観ていない光景が、まるで実際に観た残像のように浮かんでしまうから不思議。
それだけAnthonyの演技はリアルだった。

親や肉親にもっと優しくなろう。
仕事仲間や友人にもっと敬意を持ってお互い尊重しあえる関係を目指そう。

もちろんこの作品に、そんなお説教くささや押しつけがましさは微塵もありません!
むしろ事実を淡々と演じるドキュメンタリー風な印象を受けました。

でも、Anthonyの真摯に演じる姿やRENTのステージドアでいつもひとりひとりに会釈しながらサインしていた姿などを思い返すと、そう思わずにはいられないのです…
「大切な人の死を無駄にしない事」って結局はそういう事なのだと思う。

カーテンコールはSeasons of love。
その時のAnthonyの笑顔や歌声がひたすら穏やかで優しかったことも止まらない涙に拍車をかけました…
by nao201009 | 2010-10-31 18:35 | 観劇記録(Seoul)