観劇・旅行・日々のこと


by nao201009
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

カテゴリ:観劇記録(DC)( 2 )

PARADE 

e0199878_239328.jpg

リンカーンが暗殺されたBox席。犯人は南部連合支持者の俳優だったとか。


1999年のトニー賞で脚本賞と楽曲賞を獲っている作品。
今から約100年前、南部ジョージア州で実際にあったレオ・フランク冤罪事件を題材とした作品。
レミゼ以外にこれも観たくなり、リピートも想定の上、貴重な3泊をDCに捧げたのでした。

そもそもミュージカルとしては重すぎないか?ストプレや映画で扱われそうな題材ではないかと思ったのですが…。
ミュージカルファンなら一度は訪ねているであろうこちらのサイトで劇評を読み俄然興味がわきました。

NYなど大都市だけではわからないもうひとつのアメリカ。
複雑な南部社会の実態を浮き彫りにする冤罪事件。
誰もが心の奥に秘める闇。それはなんらかのきっかけで見境のない敵意へ変わり、扇動されて完全に理性のタガがはずれる恐ろしさ。やっぱり究極に重かった…。

ナンバーはどれも印象的。特にオープニングで歌われる「The old red hills of home」
故郷ジョージアを讃えるゴスペル調の壮大な合唱曲。
旅行期間中、NYに移動してからもずっとこの曲が頭から離れなかった。

静かな田舎街で起こった暴行殺人事件。被害者は14歳の少女Mary。
殺される直前、Maryは給料を受け取るためにLeo(Maryの働く工場の主)の事務所に立ち寄っていた。

そして様々な人物がそれぞれの事情で「Leo=犯人」の土台を固めていく。
事件を扱う検事Dorseyの陰湿な企みや、ジャーナリストTom Watsonの売名行為。
LeoはNY出身(北部出身)のユダヤ系。
さっさと事件を片付けるには格好の犯人像。民衆の憎悪を煽るにも格好の犯人像。

CDで聞いた時から一番気になっていたのは、Maryのお葬式の場面。
ここで歌われるMaryのボーイフレンドFrankieのソロ「It don't make sense」と参列者たちのコーラス「There is a fountain」は鳥肌もの。
Frankieは終盤、犯人への憎しみを力の限りのロングトーンで歌いあげ、そこに鐘の音が不協和音で絡みつく…。
この先の不条理な展開を暗示するのにこれ以上の楽曲編成はないと思う。

裁判シーンでは、Frankieや、Leoの工場で働く人間が次々とでっち上げの証言を積み上げていく。
そして、陪審員の判決「guilty(有罪)!」が響き渡り…。
ここでプロローグの「The old hills of home」が一瞬流れ、それはすぐさま不気味に明るい不協和音のメロディに変わり、Leoと妻Lucille以外の登場人物がみな判決に狂喜乱舞して踊り出す…。

怖いです。この場面。この怖さはMusicalならではのもの。
壮大な合唱曲が場違いに陽気な不協和音へと移行する様は、人間の建前と本音(無意識下の悪意とか)を見せつけられた思いがする。
きっと、ひとりひとりは普段は善良な人物。それが集団となった時、それぞれの心の奥深くに眠る憎悪が呼びさまされ増幅するような・・・

Dorsey検事と取引をして、決定的な偽証をする黒人の囚人(仮釈放中?)Jim Conley。
彼もまたアメリカの闇を象徴する人物。
彼によって(作品の中での)真実が明らかになる場面では思わず寒気が…。

物語後半では、妻Lucilleの奮闘でなんとかLeoの死刑は取り下げられる。
牢獄でのピクニック。シートを広げて寝そべって。夫婦の絆を確かめ合うふたり。
泣けるんだここが…。それだけにその夜の出来事がやりきれなくて…。これが実話だという事も。

ラストはまた「The old hills of home」の大合唱。
彼ら(表面は善良な人々)はこの曲を免罪符のごとく朗々と歌い上げる.........

未亡人となったLucille。「私はジョージアの女よ(だからこの土地から離れられない)」
歌う彼らをおもむろに見まわしながら最後はそのコーラスに加わるのだけど(歌ってはいなかったかな)
そんなLucilleを観て、なんとも解せない思いとともに部外者には立ち入れない何かを感じました。
その土地に生まれた定め。その時代に生きた定め。
強烈なイデオロギーが根付いている土地に生きる事って・・・

こんな感じで本当に重くて、感想を書いて改めて「やっぱりこれはマチソワ無理」と思ったくらい。
でも、でも絶対またいつか観たい作品です。
初演とはだいぶ違う演出になっていると思うけど、演出によって受け止め方がだいぶ変わる作品だと思います。
ロングランはないでしょうが、いつか期間限定でBWリバイバルはあってほしいな。

いや、本当に曲はどれも素晴らしいです。様々なジャンルが混在しているのだけど、この作品でこの場面、この人物描写、心理描写はコレしかない!と思えるから不思議。
Jason Robert Brown、「お名前だけは」という感じでしたが、彼の他の作品も観てみたくなりました。

それとストーリーを追うだけで精いっぱいでしたが、それぞれ役者さんも素晴らしい熱演でした。
特にJim Conleyを演じた方が印象的。
[PR]
by nao201009 | 2011-11-03 22:31 | 観劇記録(DC)

Les Miserables DC公演

e0199878_23363911.jpg


2月にシカゴで観たのと同じプロダクション。バルジャンが変わってました。
後はほとんど同じキャストだったかな。
あいかわらずパワフル!今回のバルジャンがまた暴走振りに輪をかけてます(笑)

まず、東宝版のオリジナル演出にどっぷり浸った後で改めての感想。
身もフタもない言い方をするとセットが邪魔・・・。
たとえばlovely ladies。上手に娼婦小屋のようなセットが配されて、そこに娼婦たちがいます。
オリジナル演出の、ガランとした舞台中央に浮かび上がる幻想的な雰囲気がなくなっちゃって残念。
あれもセットがない舞台ならではの見せ方だったんだなぁ。

あと照明による演出効果が希薄になってしまったかな。
前回観て、あまりにもジャベールの印象が薄くて、感想を読み返しても何もないくらいだったのですが。
役者さん自体は良かったと思うのだけど、病院でも下水道でも、新演出では対決場面にインパクトがなくなっちゃった。
あの音楽とともに、暗闇にバーン!と突き刺さるような照明で登場するからこそ「これぞジャベール」だったのに。
新版ではドカドカ袖から走りこんでくるんだけど、あれでは狂気を帯びた執念が伝わらない。

新バルジャンおもしろかった~。
もしサカケンさんがバルジャンを演じたらこんな感じかな、と。
(ちなみに私はサカケンさん好きです!何を隠そうアンジョで一番観てるのは彼)
Bring him homeを大声量で歌い上げ、エピローグでもお迎えに来たファンティーヌに「支度できたぞー!」「今日で終わりだ!」みたいな感じ(笑)

こんな異色のレミゼ、これはこれで面白いし、なんといってもアンサンブルの迫力。
One day moreが始まると、一斉にグッと身を乗り出すような観客の熱気。
歌声が物体に感じられる。天井を突き破りそうな力強さ。
この迫力。そして観客のどよめき。幕間のむせかえるような高揚感。
そうか、私はまたこれをもう一度だけでも体感したくてDCまで来たんだ。

それにしても、ケネディセンターのオペラハウス(2300席)が連日のように満員になる。
3日目の夜も観ておこうかと思ったら無情にもSold out。
やっぱりレミゼはレミゼなのでした。
[PR]
by nao201009 | 2011-10-22 22:56 | 観劇記録(DC)